暴君になる方法 第3話 感想
第3話ではウガンダの独裁者、イディ・アミンがいかにして独裁体制を維持してきたかについてだった。
独裁者としての地位を揺るがすのは周りの対抗勢力の政治家だけではない。国民もである。
独裁者になると自分の地位を堅持することに躍起になるあまり、人の生命を奪うことなど、小蝿を殺すことと大差ないようだ。
アミンは大統領就任当初から黒い噂が絶えなかった。
アミンが兵舎で虐殺した疑惑を持たれた際、アメリカの記者が取材にやってきた。
2日経ってその記者が行方不明に。普通に消されたのだ。
残虐の隠蔽のために残虐を重ねる。ウガンダ国民にアミンが「良い人」であるという側面だけを見せるために。
ただ、それだけでは国民の不満は消えない。
ウガンダはイギリス植民地であったため、同じく植民地だったインドからの移民が多かった。
アミンは国民の不満を自身から逸らすために、ウガンダのインド系、つまりはアジア人を敵とした。
やはり、差別というのは批判回避のための優れた手段であることがよく分かる。国民に敵を作らせ矛先を変えさせるのである。ドイツのユダヤホロコーストと一緒。
アミンは国内のアジア人を国外に退去させた。しかし、生活基盤がウガンダにある人にとって、たとえルーツのインドが移動先だとしても生きていけるのは非常に難しいのだ。
これは日本にも言えることだ。
国内の在日外国人に対して「祖国に帰れ!」という声があるが、少し頭を使えばなんとも頭の悪い発言だと分かる。
なぜなら「自分のルーツ」と「住みやすい場所」は必ずしも一致しないからだ。
とりわけ日本に生活基盤を築いた在日外国人は、たとえルーツが韓国とかであっても、その人にとって韓国が住みやすい場所とは言えないのだ。
話を戻す。
アミンはアジア系を追い出したことで、黒人のウガンダ人から大きな支持を得、アジア人が経営していた事業を横取りすることになった。
さぁ、これでハッピー!
とはならないのだ。
簡単な話である。事業を引き継いだものの、経営の「け」の字も知らない人が経営したため、あっさりと会社が潰れたのだ。
国内では欠品が相次ぎ、インフレも加速。当然国民も不満が溜まる。
そこでとうとうアミンは国民に刃を向け始めた。
反体制派を拷問にかけるなどの恐怖政治をはじめたのだ。
「逆らったらただじゃ済まない」というのは長く独裁するためには必要不可欠なようだ。
ここでアミンは大きな失態を犯す。
ウガンダや近隣諸国に権威のあるキリスト教の大司教を殺してしまった。
これには当然国民も激怒。アミン反対派が一気に増えた。
ここでアミンは最後の手段として、戦争を起こしたのだ。
国民の非難を逸らすため外国に敵を作るためだけにね。
攻められたタンザニアはたまったもんじゃない。なんせアミンの保身を理由に攻められたんだから。
んで、ウガンダはこの戦争に負けた。丸腰の市民をボコって勝ってるように見せていたようだが、実際は普通に負けた。
窮地に追い込まれたアミンは「俺のために戦え」みたいな感じで発揚を試みたが、当然誰も聞かない。
ナレーションにさえ負け犬呼ばわりだから笑える。
これだけの屑っぷりを晒しながら、晩年は亡命先のサウジアラビアでぬくぬく余生を過ごしたとさ。
お終い。
アミンは「黒いヒトラー」と言われているように、保身のために多くを殺してきた。
一見して最悪な人間に見えるが、当時の人にとっては国の救世主に見えてしまうから恐ろしい。私は国民が一種の信仰心のようなもの抱いていたと考えている。
このような感情を政治家に抱くと、その政治家に間違いに気付かないか、或いは目を逸らすことになりかねない。
国民の責務は政治家と権力の監視に尽きると思った。
余談。
失脚後、リビアへの亡命を試みたが、あまりの暴虐ぶりに同じくリビアの独裁者であるカダフィにもドン引きされ、亡命失敗したという。